それが今の私の成すべきこと。
自分自身で決めた、陰ながらアイツの世界を守る私のやり方。


私に捨て台詞を吐いて、紀天を追いかけていたファンは姿を消す。


あのバカが私の名前を呼んでいるのも聞こえないふりをして、
私はアイツに他人行儀に声をかけた。


「先ほどは失礼しました。

 憲さん、今日のLIVE楽しみにしています。
 頑張ってください」





アイツが怒ってる。

アイツが私を心配してくれてるのを感じながら、
私は今まで通り、アイツの前から姿を消した。



今の私は、Ansyalの憲を愛する純粋なファン出逢って、
紀天の幼馴染を前面に出すことは出来ないから。




その数分後……私は後ろから近付いてきた、
車の中へと口を塞がれて連れ込まれた。


車内はカーテンがひかれていて、
真っ暗だった。


そのまま両手首を縛られて、
アイマスクのようなもので視界が遮られた。


叫びたいのに、
口にくわえさせられたタオルが叫ぶことすら許してくれない。


そうこうしている間に、袖をめくられた何か薬のようなものを注射されて
私は意識を失った。