「紀天、オレたちはステージ。
 晃穂ちゃんのことは、オレが動く」




尊夜はその後、電話を取り出して何処かに指示を出した。






本番が始まり、俺たちのステージが始まる。







幻想的なoverture。



その調べが大きく会場内を包んだ時、
俺は真っ先に、ステージへと飛び出した。






眩しいスポットライトの下、スティックを掲げて会場内を見渡したとき
「憲」コールが俺を包み込む。



一礼して、ドラムの方へと移動しかけた時
会場内で、俺を見つめるアイツの姿を確認した。



無事なアイツの姿を見て、
心から安堵した俺がそこに居た。






その日、アンコールを含んで3時間のステージを走り切った後、
ファンサービスと称して、チェキ&握手会を続ける。





LIVEとその後のイベントを終えて、
会場を後にした頃には、アイツの姿はもう何処にもなかった。





「お疲れ様。さぁて、俺たちも引き上げるか」

「なら俺が運転するよ」



機材を詰め込んで、メンバーが乗り込むと俺たちは次の会場に向けて
夜の道を走り続ける。





ファン VS 晃穂。






俺の不安が、現実になる日が来るとは
その時の俺には思いもしなかった。