奏でられるサウンドは、一つの色に染まっていない。
だけど……幻想的で、広がりを見せてくれるそんなサウンドだった。
一枚のCDが、物語になっているようにも感じられてお気に入りの一枚になった。
Rapunzelの時は、持ち歩くことをしなかったアイツの曲も
今回の一枚は、MP3に取り込んで持ち歩く。
紀天と私が大学三年生に進級した夏休み。
Ansyalに、新メンバーが加わって最初のツアーが始まった。
新メンバーとして名前を連ねたのは、
もう一人のギター、祈【いのり】君。
ツアーが始まったと同時に、私もアイツの全ての公演に参加できるように、
バイトに明けくれながら、ネットでチケットを取り続ける。
夏休みの間に、全国をまわりつづける20公演。
お父さんとお母さんの援助も受けながら、
何とかアイツを追い続ける。
アイツがAnsyalに加入して、1年1ヶ月が過ぎた時
正式に十夜がAnsyalへと加入を決めた。
Ansyalの特集が、その頃から雑誌にも紹介されるようになって
本屋やCD店でアイツの顔を見るようになった。
ステージでドラムスティックを掲げて、輝き続けるアイツの写真。
ex,Rapunzel。
そんな形で、紹介するインディーズの音楽雑誌のAnsyalの特集欄。
十夜と憲の紹介の文字。
Rapunzelの名前なんて、付けなくてもいいのに。
ベッドに転がって、パタリと雑誌を閉じる。
ここに来て……アイツがかなり遠くなってしまった気がする。
Rapunzelの時は、そんな風に感じなかったのに。
だけど何度も何度も、アイツのLIVEに顔を出すようになって
私が気が付くようになったこと。
十夜と憲が目当てで、
Rapunzel時代のファンの姿もチラチラと見るようになったこと。
そしてそこでも、ファン同士の喧嘩や争いを見かけるようになったこと。
Rapunzel時代、
それらが原因でLIVEハウスが出入り禁止になったこともある。