「なぁ、一つだけ聞いていいか?
 音楽って、バンドってお前たちにとって何?」



Rapunzelの際に見失ってしまった意味を問いかける。





亀城と宮向井は一瞬、お互いの目を見あって
もう一度俺を向き直る。




「廣瀬先輩、音楽の意味もバンドの意味も
 形がないと決まりないといけませんか?

 俺はそんな枠は必要ないと思ってます。

 それより、俺たちと今ここで本音で語りませんか?
 俺たちのサウンドで。

 それでフィーリングがあえば、俺も託実も、廣瀬先輩に
 Ansyalのメンバーに正式に加入してほしい」

「なら今から俺、スタジオ押さえます」





そのまま俺たちは店を出て、亀城の親戚が経営しているらしい
楽器屋の地下室へと向かう。



そのスタジオで、朝まで楽器と向き合い続けた。




俺たちの共通となる、SHADEのカバー。


そして今のAnsyalが演奏している、
宮向井のオリジナルの曲。





俺が叩くドラムに絡みついてくるように、
空間に轟いてくる、亀城の低音が心地よくて、
俺は自分自身を解放するようにドラムを叩き続けた。






翌日、明け方に帰宅して
そのまま二学期に向けて、俺は昂燿校へと帰る。




その数日後、俺は宮向井の携帯を呼び出す。



「廣瀬先輩……」

「夜分に悪い。
 決めたよ、俺。
 お前たちと一緒にやる」

「有難うございます。
 改めまして、AnsyalのギターTakaです。
 託実は……えっと、亀城は、託実って呼んでます。

 廣瀬先輩は……」

「おいおい、廣瀬先輩はないだろ。
 俺たち、一緒にバンドするんだよな。
 だったら、憲【のり】で頼む。

 今日から俺は、Ansyalの憲だから」

「わかりました。
 憲のこと、託実に伝えます。

 改めて、Ansyalの練習日が決まったら連絡します。
 俺たちの練習スタジオは、この間の楽器屋の地下なんで」

「わかったよ。
 連絡待ってる」






随分、回り道をしたかも知れない。




だけど……俺は大切なものを見つけた。




懐かしい仲間たちと出逢った
新しいバンドで。