君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】



その日、珍しい電話番号が表示された。
アイツのジュニアである瑠璃垣伊吹と出逢ったのは過去に一度。

たった一度、アイツとのデートの会場提供に姿を見せた際、
尊夜くんは、連絡先を教えてくれた。

電話番号は登録した物の、出逢った高校時代から大学生になった今も
一度もその番号が表示されたことなんてなかった。


*

尊夜くん

*


液晶に表示された名前を確認して緊張が走る。



「もしもし、絹谷です」

「突然のお電話すいません。
 紀天から……デューティー紀天のジュニアを務める
 瑠璃垣です」

「えぇ、覚えてるわ。
 アイツが君にも迷惑かけてるよね。多分」

「いえっ。
 実はお耳に入れておきたいことがあって、お電話させて頂きました。
 
 たった今、僕はRapunzelを抜けました。
 多分、今頃は紀天も脱退しているかもしれません。

 明日から家の用事で日本を離れます。
 留守の間、デューティーのことお願いします」



お願いしますって、バカ・紀天。

弟にこんなに心配されてどうすんのよ。
アンタは。



「伊吹さん……って言うよりも、尊夜君って呼ばせて貰ってもいいかしら?
 私にとっての貴方は、出逢ったときから瑠璃垣伊吹君じゃなくて、廣瀬尊夜君だから」

「好きに呼ばれて構いませんが、場所と空気の判別はお願いします」

「そっ……そうだね。
 でも……やっぱり、私にはアンタは尊夜くんだよ。

 そっちは大丈夫?」

「……多分……。

 今から気持ちを立て直して、明日からの家業に専念します。
 そのまま夏休みに入りますので、紀天をお願いします」

「了解。紀天は任せて。
 アンタも抱え込まないで、何時でも連絡しておいで」

「それでは、失礼します」



突然の電話は、暫くの会話を交わして通信を終えた。




そのまま部屋着から着替えを済ませて、
玄関の方へと歩いていく。