「うへぇー。あれ、コンビニスイーツの癖に高いだろ。
 これから、益々お金かかんだよ。

 昂燿からここまで、練習の度に電車代かかるし……スタジオ代もかかるだろ」

「泣きごと、聞かないよ。
 それは紀天の罰だからね。
 罰。

 けど……LIVEの日にち決まったら、教えてよ」


「最初からそのつもりだよ。
 誘ったら、来てくれんのかよ?」

「行くよ。絶対に行く。
 智海と凌雅も誘って、絶対に行くからさ」

「おぉ。
 んじゃ、その時は皆で来てくれや」




そんなアイツが最初に、RapunzelとしてLIVEをしたのは、
私たちが高校三年生の冬休み。



SHADEがやってたLIVEハウスよりも、もっと小さな箱で
アイツはLIVEをした。



アイツの最初のバンド。
Rapunzelのメンバーは5人。


ボーカルは、十夜と名乗りはじめた、尊夜君。
ドラムは、アイツ。


十夜の名前を決めた時、
『尊い夜なんて重いんだよ。十の夜で生まれたくらいでちょうどいい』っとか言ったらしい。

それでもアイツは嬉しそうに笑った。

十夜では尊夜でも、アイツをその名前で堂々と声を出して呼べるのが嬉しいんだって
アイツは喜んでた。


そしてキーボードが、飛陽斗さんって言うアイツよりも二つ年上の存在。
後は、Rapunzelの人気メンバーである、ギターの八代さんと
ベースの友樹さん。


最初の招待チケットを受け取った私は、智海と凌雅と一緒に
会場へと向かった。

LIVE前、道路に座り込んだファンの人たちを
会場スタッフの人が、一生懸命、声を張り上げて「整列してください。列からはみ出ないでください」と
誘導してる。

それでも一向に、ファンの子たちは動こうとしなくて
通行人たちが、軽蔑の視線をむけながら隣を歩いていく。


「何?これっ。
 SHADEの時と大違いだよ。智海」

思わず、私の中にあった、SHADEのファンマナーとの違いに唖然とする。