To:晃穂


無事に家についたか?
今日も有難な。

オレたちは今から打ち上げだよ。
何時に帰れっかな。


残り3ステージ、オレも全力で走るよ。
そしたら、絶対食わしてくれよな。

晃穂特製の秘蔵ダレのステーキ丼。


紀天





ばーか。

何度も何度もステーキ丼ばっかリクエストして、
それじゃ、私がそれしか作れないみたいじゃん。


再び心の中で呟いて私はキッチンで簡単に晩御飯の準備を済ませる。


豚肉を簡単に湯がいて、サラダの上に乗せてドレッシングをかけて準備をすると、
タイマーセットで炊き立てになってるご飯を茶碗によそいで食事を終える。




アイツがステーキ丼食べに来る。


そう思うだけで心の中はやっぱり嬉しくて。

嬉しいのと同時に食材費を確保の為に、
自分の食費を少しでも節約してアイツ用にプールしようと思ってしまう。


何処までも私の生活の中心には、アイツの存在がいる。


洗い物を終えて、私は思いっきり伸びをして筋肉を脱力させると大切なアルバムを本棚から抜き取った。



真っ赤な分厚いアルバム。


その一頁、一頁に……アイツと私の思い出が刻み込まれてる。

一頁め。


命名:晃穂


父さんの字で綴られたその名前の下には生年月日や、
出生時間が書かれて私の手形がおさめられていた。


アルバムをめくっていくと、3頁くらいから一人の男の子が映る。


その男の子が、Ansyalの憲こと廣瀬紀天。


実家が隣同士の私たちは家族ぐるみの付き合いをしていた。


私のアルバムには常にアイツとアイツの家族が映ってる。

アイツのお父さんである、睦樹【むつき】おじさん。
そしてアイツの傍で、ずっと優しそうに笑ってる咲空良【さくら】おばさん。

そしてアイツの生みの母親。
今はもう亡くなってしまった心【しずか】おばさん。


アイツの話によると、咲空良おばさんと、心おばさんは親友同士って話だった。


だけど……戸籍上の名前は、葵桜秋【きせき】さんだと私が知ったのは、
郵便ポストの文字がわかるようになった頃。