「どうした?伊吹」
「グランデューティに呼ばれました」
「竣佑さんにか?」
そう言って、周囲に竣佑さんの姿を探すものの姿は見えない。
「紀天、もうすぐ時間だよ。
傍に居るの、紀天のジュニア・伊吹だね。
呼んだのは竣佑じゃなくて俺だから。
とりあえず入って」
そう言って練習用のスタジオに入った俺たち。
「伊吹、少し声出して貰おうか?
君、いい声してるって評判だよね」
智先輩がいきなり切りだすと、
アイツは今までと違った目つきへと変わる。
「紀天、ギターは俺が触る。
ベースは、俺のジュニアの瑞樹【みずき】が演奏するよ。
お前はドラム。
リズムキープで走らずにいけよ」
「はいっ」
ドラムセットを俺様に少し調整して、
ペダルの位置を踏みやすいようにすると、
そのままスティックを鳴らして、ドラムを叩きはじめる。
ギターとベースのサウンドが絡み合って、
SHADEのサウンドが始まると突然、伊吹が口ずさみ始めた。
嘘っ……お前、歌上手いじゃん……。
「和泉先輩、ギターかしてください」
そう言うと、今度はギターを演奏しながら
さっきまで演奏していた曲を、アイツは一人で歌い始める。
「いいねぇー。
伊吹、ボーカル兼ギターで決定だな。
紀天はドラムな。
とりあえず、俺と瑞樹と一緒に、Liveハウスで演奏でもしてみるか?」
智さんの一言で、俺たちの目標が決まった。
その後、本番までの一ヶ月。
俺たちは時間を見つけては、スタジオに集まって必死に練習を続けた。



