「晃穂、コイツが昂燿でのオレのジュニア。
瑠璃垣伊吹だよ。
伊吹、こっちが……」
「知ってますよ。
水泳で有名な絹谷晃穂先輩。
後は、悧羅校の副代表、華京院宝珠さんのジュニア。
総会に身を置いた存在なら、知っていて当然です」
可愛げなく、紀天に言いきった伊吹に、
とうの紀天は苦笑いしながら、私に「だとよ」と言葉を続けた。
瑠璃垣伊吹ってことは、この子が紀天の弟の尊夜君……。
紀天、あわせてくれたんだね。私にも。
秘密を完全に共有してくれた、そんな嬉しさが私を包み込む。
「初めまして、絹谷晃穂よ」
「んじゃ、先輩たち案内しますよ。
特等席の個室、用意させましたから。
ここオレのホテルなんで」
サラリと恐ろしいことを伝えたアイツのジュニアのペースに乗せられるように、
展望台室の奥の個室へと通される。
そこには給仕専用のスタッフが控えていて、
テーブルの上にはバイキングじゃなしにフルコースのようなセッティング。
「おいっ、伊吹……これは?」
「あぁ、父に精一杯のお持て成しをって言われたんで。
せっかくなんで、うちのシェフ自慢のコース食べてってください。
バイキングに並ぶケーキも一種類ずつ、運ばせますから。
晃穂先輩も全部食べれますよ。
じゃ、オレは一族の会議があるんで後のことは、そこにいる前田が対応します。
前田、後は頼んだ」
「畏まりました。伊吹坊ちゃま」
そう言って深々とお辞儀をした前田さんは、
向き直って、それぞれの椅子を後ろにひいて座るタイミングで前に動かす。
その日、伊吹くんがセッティングしてくれたフルコースを食べて
お腹が満たされた私たちは、ホテルを後にして食後の運動宜しく、
市営のコートに直行して、軽くバスケットボールを手にして軽く食後の運動。
久しぶりにレンタルで借りたバスケットボールを手にしてシュートをしてる姿をみて、
また心がドキドキした。
何度でも何度でも……私は、
アイツの一瞬一瞬に恋に落ちてるんだ。
多分……アイツを思う私の感情は、
恋って言うのかもしれない。
そんなことを思いながら、一つのボールをアイツと追いかけあう。
バスケの後は、映画館で映画を見て、
その後は、また楽器屋に出掛けてアイツのドラムを楽しむ。
前より確実に上手くなってるアイツのドラムに、
私も負けられないって思えた。
デートの最後は、展望台のあるタワーへと昇って地上に輝くイルミネーションを楽しむ。
その日……私は生まれて初めて、
アイツとキスをした。