君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】



LIVEの日。


あの日、会場前から動けなくなった私を迎えに来たのは、
アイツじゃなくて凌雅君と智海だった。


紀天に頼まれたって凌雅君が私に何度も告げるけど、
私はそれが受け入れられなくてアイツが来ると信じて待ち続けたくて、
その場所から動けなかった。


雷鳴と共に激しく降り出した雨。


それでも動こうとしない私に智海は自分の鞄から取り出した折り畳み傘を
ゆっくりと開いた。



少し姿を消した凌雅君は、今の季節には探すのが難しそうな
温かいホット飲料を手に戻ってきた。



「はい、晃ちゃん。
 雨で体が冷えてるだろう。

 大会前なのにスポーツ選手が体冷やしたらマズいだろ」


そう言いながら私の目線に座り込んで、
手渡してくれるペットボトル。


伝わる熱の暑さに、自分の体の冷え具合を自覚する。


何時の間にかLIVEは終わっていて、
会場から出てくるファンの人たちは、
流れるように駅へと行列が移動していった。



「ほらっ、アンタも帰るよ。

 そんなにぴしょぬれで、
 帰れないでしょ。

 今日は私の家にお泊り。

 さっきの雨と一緒に流れた涙のわけも全部、聞いてあげるから」



そう言うと智海は私を抱きかかえるようにして、
ゆっくりとその場所から立たせた。



立ち去る間際、建物の中から車に乗り込む誰かがこっちに近づいてくる。



「やっぱりそうだ。
 体、これで拭くといいよ」


そうやって手渡されたのは大きなツアーグッズになってるバスタオル。
その人はそれだけ手渡すとファンに囲まれるなか車に乗り込んで会場を後にした。