「じゃあな、理緒。 がっこーで」


小さく、そう言った彼方。


「あっ、うんっ」


そう言って出口の方へ歩いていく彼方。

なんだか、元気のない背中だった。


「あ、邪魔しちゃった? ごめんねー。彼氏?」

「ちがうちがう」

「お母さんなら大丈夫だよ。おいかけなくていいの?」

「ごめん、学校終わったらまた来るから! じゃ、あとでね!」


そう言って、彼方の後を追う。

まだ、いるよね…


さっきの、カップルがいたところに

彼方が、一人で座っていた。


あたしが近寄ると、そっと振り向いた。


「学校でなって言ったのに、もう会ったな」

「そうだねっ」

「ちょっと早いけど、学校向かうか。」


少しの沈黙。

破ったのは、彼方。


「そうするかー!」


そして、病院を出て歩き出すあたしたち。


「ねぇ、彼方の家ここら辺なの?」

「そーそー。 そこらへんにある、一軒家ににーちゃんと母さんで住んでる。」


あ、お兄ちゃんいるんだっけ。


「いいね、お兄ちゃん」

「理緒にだって姉ちゃんいるだろ」