カップルの近くを通り過ぎて、病室前の廊下

そこにある、長ベンチに座ってる一人の男。

あたしと同じ制服着てる…。

でも、下を向いてて顔がよくわからないし。

もしかしたら、先輩かもしれない。

そういえば、うちの学校ってネクタイとリボンの色が、学年別になってるんだっけ。

近く通ったときに、ちらっと見てみよう。

もしかしたらイケメンかもしれない。

これが運命の出会いになっちゃったりして。


って、えっ?!

なんでここに…。

「彼方……?」

「ふぇっ、理緒?」


気の抜けた声…

いきなり声掛けたあたしが悪いのか。


「どしたの?こんなとこで。」


それ聞きたいの、こっちだよ…


「お見舞い?かな」

「彼方は?」と付け加えると、また下を向いた。

「おれも見舞い……」

お母さんの病室のドアがあいた。


「あれ、理緒?来てたの?」


那緒… 目腫れてるよ……