「ねぇ、那緒はお母さんと住んでるの?」
ちょっと先を歩いていた那緒が
後ろを振り向いた。
「あたしの家、くる?」
* * * * *
「ただいまーって、汚くてごめんね」
小さなアパート。
一つの建物に、4個しかない部屋の2階奥。
キィーと音を立てる階段を登って、着いた先。
ここが那緒の家…
「お母さんと住んでるのかと思った。」
病院から徒歩10分くらい。
ウチと、正反対の方向。
結局、時間は1時を回って。
あくびが頻繁になってきた。
「住んでないのよ。一人暮らし!」
テーブルの上に雑に置かれた雑誌を片付けながら、返事する那緒。
「連れてきたのいいけど、布団ないや。 一緒に寝る?」
「イヤ… 掛け布団か何かあれば十分です」
「そぉー? 寒かったら言ってね?」
「うん。 朝、シャワー借りるね」
「どーぞ、ご自由に!」

