渚の顔に笑顔はあるがそこから留依に向けていた優しさは抜けていて、違和感を覚える。

電車に乗っていると、通っている鷹穂(タカホ)高校の最寄駅に近付くに連れて目線が集まってくる。

それにまるで気づかないように目線を散らせる事も無く今日の渚は気分が良かった。

最寄り駅に着き学校へ向かう途中も目線が集まる。


「なーぎさ!今日は徒歩通学ですか〜?
何々、いいことでもあったの〜?」


渚の背後からにゅっといきなり出てきた腕は肩に回され、顔を覗き込むように話しかけられる。


「…瑛太、離れろ」


瑛太と呼ばれた彼は渚の幼馴染でもある鈴木 瑛太(スズキ エイタ)。


「ルイチンに何か嬉しいことでも言われたのか〜?」


そして彼もまた留依とも幼馴染で良く三人は一緒にいた。


「留依が、僕のためにクッキーを焼いてくれるらしい。
…お前にはやらないからな…?」

「…本当ルイチンに甘いのな。まぁ構いたくなる気持ちも分かるけどさー。
あ、でも俺もクッキーもーらお!あいつの作ったお菓子は美味いからな!」


瑛太の発言にいらっときた渚は無言で腕を払い校舎へと向かってしまった。


「おいおい渚〜、拗ねるなよー!いいじゃねーか、お前の分は取らないからさ〜!」


そんな渚の後ろを慌てて追いかける瑛太。