「なーちゃん……ごめんね?私ばっかり楽しそうにして…。そんなに悲しそうな顔しないで?」


悲しそうな渚を見た留依は切ない気持ちになり、頭を撫でていた手に自分の手を被せ謝る。


「鞄…今からでも持ってくれる…?」

「勿論、持つよ」


ニッコリと笑った渚につられて留依の顔にも笑顔が戻る。

鞄を受け取った渚は反対の手で留依の手を握る。

それに答えるかのようにギュッと握り返した留依は手を揺らしながら楽しそうに話し出す。


「なーちゃん、その鞄にはね、寧々ちゃん(ネネ)に渡すクッキーが入ってるんだよ!」

「留依、僕にはくれないのかい…?」

「勿論あげるよ?寧々ちゃんは昨日私にクッキーをくれたの。だからそのお返し、なーちゃんには明日新しいのを焼いてあげるね!」

「ありがとう、留依のクッキー楽しみにしてるな」

「うん!」


そして何事も無かったようにたわいも無い話をしながら学校への道のりを歩く。

留依の学校は家から電車を一駅経てたどり着けるその地域では名前が知れ渡っている女子高校に通っていた。

一方渚は留依の学校から更に二駅離れた共学の学校に通っており、そこもまたちょっとした名の通った学校だった。