愛しのケダモノ王子


本当は怒ってたわけじゃない。

むしろ、悲しかったんだ。



羽山は、女の子なら誰でも手を出すやつだと思ってた。

だけど私のことは、他の女の子みたいな扱いはしなかった。


それは女として見られていない反面、

他の子とは違う“特別感”があったから、私はそれでも良かったんだ。



だけどあの日、羽山にキスされて…



私は羽山にとって、“他の女の子と同じ”になったのだと思った。

特別ではない、ただの女になったのだと思った。


そう思ったら悲しくて、耐えられなかった。




「言っとくけどあきら、

俺、他の子とはキスとか一切してないからな」


「.…えっ?!うそ?!!」


羽山の思いがけない言葉に驚く。


「誰とも続かなかった原因はそれ。

俺が一切手を出して来ないから、だんだん不満に思ってフられるっていうオチ」



「嘘でしょ…あの羽山が?信じられない」

「あきらお前…俺を何だと思ってたの?」