愛しのケダモノ王子



「冗談なんかじゃねーよ!」


そう言うと、私を抱きしめる腕にぎゅっと力がこもった。


「俺はずっとあきらが好きで、でもあきらはそうでもなくて…

他の子と付き合ったのだって、最初はあきらへの当て付けみたいなものだったんだ。

だけどあきらは俺のこと全然そういう対象には見てくれないし、

だからあきらのことは吹っ切って、他の子を好きになろうと努力した時もあった。


….だけど無理だった。

あきらのことが好きなのに、他の子を好きになれるわけなんてなかったんだ」



「ちょっと、羽山、離して」


私は羽山の胸の中でもがいた。

だけど羽山の力は強くてびくともしない。


「…嫌だ、離したくない。

あきらがまた俺の前からいなくなるなんて、もう嫌なんだ」


「羽山…」



その時、誰かが階段を登る足音がした。

同じフロアの住人らしき人物が近付いてくる。


「ヤバイ、羽山!誰かきた!とりあえず中入って」

「う、うん」