愛しのケダモノ王子



「ふーん、そっかいないのか」


どこか含み笑いで、羽山はそう言って頷いた。

その笑顔がなんか無性にムカついた。


「悪かったわね、男っ気なくて。私は羽山と違ってモテないのよ」


「でも女であることを武器にしないのが、あきらの良いとこだよな。

たまに男の俺より男らしい時あるしさ」



「…それ、褒めてんの?」


「褒めてるよ!

すぐ泣いたり、無理なワガママ言ったり、都合良い時だけ甘えてきたりとか、

そうゆう女子特有の性質っていうの?

あきらはそういうのないもんな。

だから楽なんだよ、一緒に居て」


「……………」



最寄り駅に着くと、人の姿もまばらだった。


「あきら、マンションどっち?送ってくよ。」


「……いい」



「暗いし危ないだろ。女の子ひとりじゃ危ないって……」


「良いって言ってんでしょ!!」



羽山の顔が見れなかった。

顔をあげたら、きっと私、ひどい顔をしてる…。

そんなところ、羽山に見られたくない。