「あの、ありがとうございます。 えっと、あたし、記憶すっぽり抜けてて…」 「ああ、彼もそうじゃないかって言ってたよ。 よっぽど夢中だったんだねえ」 ―彼。 「あの、彼って…」 「ん?わかるでしょ。君の大事な、彼だよ。 運んでくれたのはその人」 頭に浮かんだのは、ただ一人だった。 「放課後まで起きないだろうから、 授業が終わったら迎えに来るって言ってたよ。そろそろかな?」 ドアが開く音がした。