それから十分ほど拓也くんと話し、





家に帰った。





ドアの前まで来て、入るのを躊躇う。





一人で、真斗が泣いている部屋に入るのは、




なんだか気まずいのだ。






でも………入らないと。






あたしは深呼吸を一つしてから、笑顔を作った。





ガチャ。




「ただいまー!」






出来るだけ元気な声を出した。が………。







『おっかえり~』この返事が聞こえない。





やっぱりか……………。






あたしはリビングに入った。





でも、気のせいだろうか………?





返事が返ってこないのは分かる。けど…






いる気配がないのは…………。






なぜ……………?






泣き声も、気配も、何もしないのだ。







「…………真斗?」





………………………………






リビングには、彼はいなかった。




あたしの部屋にも、ベランダにも、和室にも、お風呂にもトイレにもキッチンにも…………






「……………………いない……」








真斗が━━━━━消えた…………。



















たくさんの心残りを残したまま………





どこかへと、






消えてしまった━━━━━━━。