「今までどこほっつき歩いてたんだい!」
『うわぁ、ウルサいウルサい!
鼓膜破れる~』
嘘っぽい口調で、耳に手を当てているのは、お馴染み・西條 真斗くん。
「いいから早く答えなさいよ!」
あたしは今、リビングに真斗を正座させて聞き取り調査中。
真斗は嫌そうな顔であたしを見た。
『……カレンとこと、拓也んちに行ってきたんだよ。』
「…………え?」
つまり………カレンさんに会って、悔いを消そうとしたわけ………?
だったら真斗は何でここにいるの……?
真斗は、あたしの考えが分かったようで、ふふっと笑い、話し始めた。
『………自分の中にある心残りを探しにいったんだ。
カレンに会って、ごめんねって言ってきた。
大好きだったよ、って言ってきた。』
あたしの胸が、少しだけ痛んだ。
『…………拓也んちにも行った。
新しいお父さんにも会った。
幸せそうで安心した。』
「…………………」
『これで思い当たる心残りはもう消した………………なのに…………』
真斗は悲しそうに目を伏せ、右手のひらを見つめていた。
『………なのに………、成仏できないんだ。
…………もう、やりたいこともないし、
悔いもない。
なのに……………成仏できないんだよ…』
真斗が右手を握り締めた。
「……………………真斗、」
「だからもうちょっとここに滞在するんで、よろしくちょ♡」
バカ丸出しの顔と声が、聞こえてしまった。