ガラス張りの黒い木枠で縁取られた窓に、門を超えた先の街の端に今にも沈みそうな太陽から届く、淡くてほの暗い夕日が差し込む。

窓の外に広がる広大な校庭が、さっと色を変えて夕暮れ色に染まる、幻想的な一瞬。

この瞬間が好きで、毎日毎日飽きずに眺めている。


少年の明るい茶色の髪が夕日に照らされ、闇夜と同じ色の瞳は目尻がやんわり緩められた。

―――綺麗だなあ。


いつものようにじっと夕日が沈むその様子を見つめていると、リーン、リーンと、一日の終わりを告げる終業のベルが鳴り響く。


その瞬間次々と筆を収め立ち上がる生徒たち、講義は終わり、と重く分厚い教科書を閉じ告げる講師。

バタバタと慌ただしい音にまぎれて、少年はほう、とため息をついた。

太陽は未だ、街の向こうの地平線。



「イアン、飯食いに行こうぜ」


他の生徒たちが去っていく中、未だ肘をついて窓の外を見ていた少年に、ふと声がかかった。

呼びかけられた少年、イアンは顔を上げ、いつものようにわざわざ一つ下の学年の教室まで迎えに来た親友を見上げる。



「カルマ」

「また外見てたのか?」

「うん。綺麗だろ?」


そうだけどなあ、よくも飽きずに毎日見るよなあ、そう言って少年カルマは、呆れたように蒼い頭を掻いた。