一日またいで、演習当日。
朝食を無理矢理乱入してきたリオととり(ペアの相手が男だなんて云々という話を延々された)、一人で演習場へ向かうロゼは、う~ん、と少し考え事をしていた。
演習場への道とイアンの名が記された紙を手に、眠たげに目をこする。
「あらロゼ、おはよう。なあに、緊張して眠れなかったの?」
そんな彼女に、同じ場所へ向かうところだったイヴが後ろから追いかけ声をかけた。
育て親に気付いたロゼは、周りの目を気にしつつ彼女と歩幅を合わせる。
「おはよ。違うわよ。子供じゃないんだから…。…また変な夢を見たの」
「あら。前から言ってたやつ?」
「そう。…それよりいいの? こんなところで並んで歩いて」
「いいのいいの。 おひとりの首席ちゃんとコミュニケーションよ! なんていい先生なのかしら」
「…」
色々とグサグサ刺さったロゼは、うるさい、余計なお世話だ、とむくれて明後日の方向を向いてしまった。
その瞬間、イヴは意味ありげに深い瞳で彼女を見つめる。
かと思えば、その先のロゼの背後にあるものを見つけ、途端ににんまりと意地の悪い顔をした。
「ヲホホホホ、じゃあご機嫌あそばせ」
「? イヴ?」
なんだなんだ、と怪しむ彼女を残し、イヴは颯爽とその場を去った。
訝しんでいると、すぐに後ろからロゼ、と声がかかる。
中低音のそれに、少女はぴゃっと驚き肩をすくめた。