【美華】


ぐちゃぐちゃの男の部屋。

ぐちゃぐちゃの教科書。

ぐちゃぐちゃの服たち。

こんなに汚い部屋だとは思っていなかった。

日に焼けた茶色い髪。筋の通った高い鼻。長いまつ毛。しっかりとした広い肩。しっかり筋肉がついた腕。

私はドキドキしながら彼のことを見ていた。

その視線に気づいたのか、彼がふと顔を上げた。

「どうした?」

その声にさえもドキドキする。

「なんか付いてるか?」

「えっ?…いやっ…別に……」

「そうか。 …ってか、美華聞いてる?」

「え?何が?」

「…おいおい……お前、来週テストあるから、俺ん家来てるんだろ?さっきからずっとぼーっとしてんじゃねーか」

「あ…ごめんなさい…」

そうだ…私、テスト勉強しに来てるんだった…

すっかり翼に夢中になってしまった…

これじゃぁ、邪魔なだけになっちゃうね…

「ごめん、翼。今日はもう帰ろうかな…なんか、熱あるみたいだし…」

正直いうと、さっきからずっと頭が痛かった。

「おい…大丈夫か?」

「ん…頭痛いけど」

「じゃぁ、家まで送るよ」

そう言って、翼は私をおんぶして家まで送ってくれた。