「お二人さ~ん」

さっきの長髪ウエイターがやって来た。

「ドリンク飲んだ?おいしいでしょ」

「はい……」

瞬也も頷いた。よし、と満足そうに長髪ウエイターがおかわりを注いでくれた。

「ドーナツの穴ってさあ、なんで空いてるか、知ってる?」

「火が通りやすくするためだろ」

「まぁまぁ正解。表向きはそう。でもね~、裏向きの理由は……」

皿に残っていたドーナツをひとつつまむ。

「人が通りやすくするためなんだよね~」

視界がぐにゃりと曲がった。長髪ウエイターの笑顔がゆがんで見える。

「なにを、したんだ……」

「願いを叶えるスポットを探してるんだってね」

目が回りすぎて、目を開けていられなくなった。

「路地?地下?そんな次元にあると思うかい?ふつうの方法じゃ見つからないね。一番端のゲートから入って、どんぐりを手に入れて、ドーナツと交換して、ドリンクを口にでもしない限りは。」

ぜんぶやった気がする。

「は~い、そういうことで、いってらっしゃ~い」

ジェットコースターとコーヒーカップに、同時に乗ったような感覚がした。

「きゃー!」

「うわー!」

「元気でね~」

暢気な声に見送られて、どこか知らないところに、飛ばされていくみたいだった。


210507-1