ゲートをくぐると、そこは別世界。

一気に外国へ来た気分にさせられる。

知らずにうきうきしてくるのは、大音量でかかっている音楽のせいだろう。

きょろきょろ見渡すと、入場したとたんに走り出す客が多くておもしろい。

「ねえ、チョリッスがいるよ!」

等身大のチョリッスが、子どもたちと握手をしている。

つい二ヶ月前まで小学生だった茜も、「行きたいな、行きたいな」オーラを出してみたが、瞬也はなにかを探しているようだった。

「そう。行ってくれば?」

同い年の子どもからそんな風に言われるとおもしろくない。

近頃の茜なら「じゃあ、いい」と諦めただろうが、大音量でかかっている音楽のせいか、現在進行形の茜は気が大きくなっていた。

「瞬也も来る!」

いきなり引っぱったから「がぅ」と呻いたような気がしたけれども気のせいだろう。

チョリッスと握手するための列に二人で並び、順番を待つあいだに聞いてみた。

「なにを探してたの?」

腕をさすりながら、痛そうに「どんぐり」という。

「どんぐり?」

「普通のじゃなくて、……うん。たぶん、普通のじゃないんだ。まずはどんぐりを探したいんだけど……」

よくわからないけど、どんぐりか。

心の中に〝どんぐりを探せ〟とメモをする。

さっき瞬也は地面を探していたけど、普通じゃないなら道ばたに落ちているとは限らない。

210503-1