「下らん」

一蹴する猛流。

「永久子は『黒の者』だぞ。俺はその天敵の外道武士だ。有り得ん」

「んな事ぁわからねぇぞ?永久子は生前、男に愛される経験をせずに非業の死を遂げた。いわばまともな男はお前が初めて…今が永久子の初恋なのさ」

ニヤニヤと笑いながら、慈空は猛流の肩を叩く。

「どうだい猛流、その想い、成就させてやっちゃあ?上手くすりゃあ永久子も成仏してくれるかも知れねぇぞ?」

「……」

肯定も否定もせず、猛流はただ興味なさげに無表情のまま。

その時だった。

「法外 猛流」

関所の者が歩み寄ってきた。

「ここにいたか」