不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】

 誰一人助けてくれなかった。

みんな傍観者だったから。

いや違う。
でも俺には解った。


百合子の手がみずほの携帯を手にした時に、その邪悪な者は百合子を落とそうとして離れたのだ。

みずほを落とすためではなかったのだ。


百合子は自分の手で結局みずほを落としたのだ。
でもその事実を認識もしないで、次の犠牲者の品定めをしていたのだった。




 邪悪な者は百合子がキューピッド様をやった時に呼び出されたのだ。
でも百合子は自分の意志だけで書いた。


《いわきみずほ》
と――。

邪悪な者は本当は書きたかったのだ。


《まちだゆりこ》
と――。


だからその仕返しをしたくて百合子に取り憑いたのだ。


百合子を落とすために百合子から離れたのだ。

でも百合子は芯から邪悪になっていた。

クラスメートを殺す計画を立てた時から既に……




 百合子は参加した全員が握った鉛筆で、さもそれがキューピッド様の意思のようにみせかけて自らの力で書いた。


《いわきみずほ》
と――。

俺でも、みずほでも良かったのだ。

俺が死ねば翔太はずっとレギュラーだ。
でもみずほなら、クラスメートを焚き付ければ自殺にもっていける。

そう踏んだのだ。


案の定アイツ等は百合子の思惑通りに動いた。

ライバルなんて始末すればいい。
そう思い千穂もそれに乗ったのだ。




 千穂にとってのライバルはみずほだった。

俺を取り戻すためか?

でも俺は千穂を好きになった覚えはない。


みずほが死ねば、俺がどんな思いをするか解っていて……
偽りの優しさで俺を癒し、愛してもらおうとしていたのだろうか?


そんな二人だからこそ、キューピッド様が付け狙うのだ。

みずほを落とすためではなかたはずなのに……