不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】

 《岩城みずほが飛び降り自殺する》
その情報がみずほのクラスに錯綜する。

すると、クラスメートが浮き足立った。


みずほは成績優秀の生徒だった。
学年では上位グループ。
クラスでは殆どトップだったのだ。


死んでくれたらライバルが一人減る。
そう思い、その事実を確かめるために屋上へ集まったのだった。


みんな、そんな連中ばかりだった。

友達なんて上辺だけだった。


だからそんな心理に百合子はつけ込んだのだった。




 『自殺するなら早くしろ!!』


『そうだ。俺達は暇じゃないんだ』

心ない野次が飛ぶ。


そんな中、みずほは携帯を手に取る。
俺に助けて欲しくて……


それを百合子が取り上げる。


でも百合子は気付かなかったのだ。
みずほがリダイアルで俺に掛けていたことを。


俺はその時、百合子の中に邪悪な何かを見た。

それはコンパクトに感じた者とは若干違っていた。


百合子はきっとキューピッド様を遣った時、体を乗っ取られていたのではないのだろうか?


だからあんな真似が出来たのだ。
俺はそう思うことにした。



 携帯を取り返そうと、みずほが百合子に近付く。

みずほを焦らすかのように、百合子は千穂の手に携帯を渡す。


そして姿を隠した。
でも邪悪な者が百合子から離れ、百合子に体当りをする。

でもそれは百合子自体の邪気によって跳ね返された。
その時百合子は、心底悪に成り下がっていたのだ。


その弾みでクラスメートに当たり、増幅されてみずほに……

いや、百合子だ。
百合子がみずほに向かってる。

そして百合子は、何かにつかまろうとして手を伸ばす。


その弾みで、みずほがよろけて柵に向かってる……




 『誰か、誰か助けてー!!』

みずほが叫ぶ。
でも誰も助けてはくれなかった。


もう一度みずほは救いの手を求めた。


『助けてーー!!』

みずほが叫んだ時、偶然に俺に着信したのだ。

俺がもたもたしていたからだった。
もっと早く携帯を手にしていれば……
後悔が俺を襲った。