不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】

 告別式の会場は、市の斎場だった。

みずほの通夜の日。

遺体は送り出した時と同じ、綺麗な状態のままで帰って来た。

MRIとエックス線写真。
それと目視による検査だったからだ。

それでも、一部はこれからおこりうる可能性のための資料として保管されたと聞いていた。

所謂、DNAが採取されたようだ。
それでも俺はホッと胸を撫で下ろした。


(――良かった!)

思わずため息が漏れた。
損傷のない程度で安堵したからだった。


遺体をこれ以上傷付けたくないと言う両親。

それを説得させてまで、解剖を勧めた俺。

幾ら自分で納得いかなかったからと言っても、言って良いことと悪いことがある位百も承知だったのだ。

だから自分の行為を愚かだと思い続けていたのだ。


その結果死因は、全身打撲と脳挫傷だった。

飛び降りた事実に間違いなかったようだ。


でも一つだけ気になる箇所があったようだ。

それは、胸元に微かに付いた痣。


もし打ち付けたのだとしたら、もっと強く出るらしいのだ。




 気になった……

物凄く気になった。


どうしても見たくなった。


どんな痣なのか?


何故付いたのか?


俺は悪いと思いながら、その部分を開けて見た。


リレーのバトンタッチでみずほの胸が迫って来たのを思い出した。


(――あの時には確かになかった!)
目視出来る、微かな痣。


俺は屋上でコンパクトを通して垣間見たみずほの苦痛な表情と、あの現場の情景を思い浮かべた。