夕方6時半。


「あぁー。そろそろバイトだし、帰るね?
またねーん!」

「ん。がんばっておいでねー!」

「おうさ!!」


美咲と別れて、私も家路につくことにした。

薬を飲んでからもう、5時間は経ってるはず。

なのに一向に痛みは止まず、気のせいか、脚の傷まで疼いてきた。


そういえば、聞いたことがない。
私が小さかったころのこと。

別に、聞いたことがないわけじゃない。
でも、結局いつもはぐらかされて、まともに話を聞いた記憶がないきがする。

それだけじゃない。
名前の由来も、脚の傷のことも・・・

考えてみれば、私は『今』より前のことを、何一つ耳にした記憶がない。