案の定、美咲はポケットに入れたままのチケットを出せずにあたふたしていた。

そんな美咲を見てると、顔が綻ぶ。

改めて、冷えきった私の心に、美咲は必要不可欠であることを思い知る。


美咲に駆け寄って、おしりのポケットからはみ出たチケットをなんとか取ってやる。

「おぉーう、さすが陽ぁーー」

「先に突っ走るからだよ?」

「すんませーーーん」

とりあえず、2人揃ってまだ明るい場内に入り、席を探した。

自由席だから、どこでもいいんだけど。

折角ならいい場所でみたい。

なにより、

「こっちだぁ!いや、もうちょっとこっちだぁ!」

と席を選んでいる美咲を見るのが楽しくて仕方なかった。