春になり、日が長くなったといっても、7時には辺りはすっかり闇に包まれる
これほど暗いとさすがに怖くなってくる
(やっぱり乗せてもらえばよかった…)
だが今更後悔しても遅い
ならば出来るだけ早くこの通りを抜けてしまおうと、足を出そうとした、その時だった
「ッ!! んぐッ!!?」
突然背後から腕が伸びてきて、口と鼻を押さえられた
うまく呼吸が出来ず、パニックになり力の限り抵抗するが、まったくびくともしない
力の強さや体格差から男で間違いないだろう
(やばい、やばいやばいっ!!)
酸欠になり、動きが鈍くなっていく私に、諦めたと思ったのか
調子に乗った男は制服のスカートの中へ手を滑らせ、太ももを撫で上げる
気持ち悪さに肌が泡立ち、恐怖に身体が震える
(怖い、誰か…助けて!!)
声を出そうにも、口は塞がれていて声は出ない
その間にも男の行動はエスカレートし、下着にまで手をかけてくる
思わず顔を背け、目には涙が浮かぶ
すると目を向けた先には、インターフォンのボタンがあり、そばにはスピーカーもついている
(これなら助けが呼べる!!)
幸いにも腕は自由、震える腕でなんとかボタンを押す
ピンポーン
「!!」
音に驚いた男は瞬間的に私を突き放すように地面へと投げ捨て、走って逃げて行った
「ッつ…げほっげほ…ッは、はっ…」
『どなたですか?』
苦しさに噎せこんでいると、スピーカーから男性の声が聞こえる
(助かっ、た?)
苦しさと助かった安心感で緊張の糸が切れてしまった私は、倒れこむように気を失った
意識を手放す寸前、ドアの開く音が聞こえた気がした