放課後、私と柚はそれぞれの楽器を持って帰路についた
柚の手にはトランペット。
柚の奏でるトランペットからは、彼女の明るさをそのまま音にしたような、楽しく華やかな音色を感じる気がする

私の手にはホルン。
中学から始めたこの楽器は、最初こそ乗り気ではなかったものの、今ではすっかり気に入っている。
柔らかな音も、太く逞しい音も出せる、色々な表情を見せてくれるこの楽器が私は大好きだ。


「じゃあうち車こっちだから!」

「うん、また明日!」


駐車場へかけていく柚を見送ってから、しまったと思った

(また駅まで一人だ…)


部活をしていないお陰で辺りはまだまだ明るいのが救いだったが、あんなことがあった通りを一人で歩くのはやはり不安だった

(みんな帰っちゃったし……)


辺りを見回して怪しい人影が無いことを確認すると、出来るだけ日だまりの中を駅まで走り抜けた。