神様は不公平だ。
学力も運動神経も容姿も
一体どうして同じにしてくれなかったのだろう。
クローン人間が作れるというけれど、もういっそ動物のように
みんな同じ顔で生きていけたらいいのに……。

小学三年生ぐらいのときから、陽菜は毎日のように思っていた。
理由は簡単なことだった。

当時、クラス一のイケメンに恋していた陽菜はある日友達にこう言われた。

「陽菜の容姿と運動神経じゃ、あいつは振り向かないよ」

この言葉がまだ幼かった陽菜の胸にぐっさりと突き刺さり、
中学三年生まで成長した今もまだその棘は抜けていない。
その友達がいじわるだっただけなのかもしれないが、
あのときから自分に自信が無くなり、
このようなひねくれた考えを持つようになった。


「おーい!終わったよ」

とん、と肩を叩かれ、少しだけ顔を上げると、
黒板に書かれた英文が日直の手によってどんどん消されている。
どうやら授業は既に終わっているらしい。
ずっと同じ体勢で寝ていたためにしびれてしまった手を、
ぐんと上に伸ばし、重たい腰を上げる。

「おはよう」

そんな陽菜の様子を見ていた瑠依が、ひょこっと横から顔を出す。
愛くるしい笑顔は陽菜の憧れの対象でもある。
陽菜は寝ぼけた声で「おはよう」と返事をする。