コール音が鳴り響く中、母親が電話が出ないことに苛立っていた。一度電話を切って、再度かけてみるものの、結果は同じだった。

「出ないみたいだな」
「こんなときに」

 達磨が歯軋りをしていると、結実香に服の裾をクイクイと引っ張られた。

「何?」
「お腹が空いたの」
「俺は何も持っていないよ」

 涙腺が緩んで、結実香は今にも泣きそうな顔をしていた。達磨が視線を逸らせようとすると、結実香が移動して追いかけてくる。別の方向に顔を向けても、結実香は瞳を潤ませながら、じっと達磨を見てくる。
 隣で琉生が腹を抱えて笑っている。

「このお兄ちゃんが何か買ってくれるみたいだよ」
「達磨!俺に押しつけるな!」
「私、達磨がいいの」