でも、知れば知るほど…聞けば聞くほど、机の横に掛けられた袋に入っているパーカーが返しづらくなる。


クラスはさっき晴美に聞いてわかった。


でも、学校一の王子様でファンクラブがあるほど人気だと聞いた今、直接本人に返すのはいささか怖いものがある。


寧ろ近づけるかでさえ危うい。


直接渡したところで、少女マンガみたいに『お礼は…』とか言われるのが一番面倒くさい。






ならば…



私はメモ用紙を一枚取り出すと、ペンで字を書き始めた。
王子の機嫌を損ねぬようなるべく丁寧に。







「わー!城山君が外にいるよ!!」


「ええ!どこどこ!?」


「ちょっと!見えない!どいてよ~」





女子たちがその王子を見ようと教室の窓を取り合っているが、

私は席にへばり付いて字を書くことに集中した。









最近気づいたが、私は少女マンガに興味があっても、
そこでイケメンの性格の悪さを十分体感した為か、どうやらイケメンに対しミーハーな気持ちになれないどころか、性格を疑ってしまうらしい。




どうにか無事にパーカーを返して、彼と無関係な人間になれる事を考えていた。






『計算高くないとは言ってないよ』

彼のその言葉をすっかり忘れて………