「…え?」


私は、自分の手に持つパーカーと男の子を交互に見た。



「いや、でも……そうしたら君が寒い思いするんじゃないですか?」


「俺、コートにフード付いてるし、傘も持ってるし大丈夫だよ。
こういう時は甘えて使いなって」


「えー…いやいやいや、初対面の人に甘えるとか無理です。
私、雪大好きなんで!むしろ雪に埋もれながら歩きたい的な?」



無理のある言い訳をしながら男の子にパーカーを返そうとする私だが、
その必死さは相手に伝わらず、逆にまたパーカーを広げて頭の上から被されてしまう。



「言い訳が下手だから却下。大丈夫、貸したからお返しは倍で返せなんて言わないよ」


「え?言わないの?……いや、イケメンは性格悪いって良く聞くし…そんな事言いながら『お前俺の奴隷になれ』とか横暴な事言うんじゃないですか?」



私は知っている。
イケメンの性格が頗る悪い事を…
それによって涙を流した少女マンガの主人公たち…


怪しむ目で男の子を見上げていれば、男の子はフッと噴出して笑った。


流石イケメン。笑顔もイケメンだ。




「何それ。どんな設定だよ。そんな見返りなんて求めてないから大丈夫」


「無料サービスって事でしょうか…」


「そんなお店みたいな…でもまー無料で提供って事で」



………イケメンなのに…意地悪も見返りもなしで無料提供!?



そんなの…



「いや、逆に駄目でしょう!イケメン設定の男子はもっと計算高くないと!」



「えっ!?どっちなの!!」