夢境は焦った。
バレてしまったのではないかと。
紛らわす為一応ごまかした。
「人違いなんじゃないか!?
オレは姫じゃないし、それに、
女ではない!」
と言った後で緋色にコソッと言った。
「オレは男で通してるんだ。
ここでバレるわけにはいかない。
思ったが…
何故女だと知っている…?」
緋色はうつむき加減で
少し寂しげな顔をした。
「もしかして…私の事を覚えて
らっしゃらないのですか…?」
夢境は思い出そうとしたが、
全く浮かんでこなかった。
それもそのはず。
記憶をなくしているのだから…。
「いいんです。
無理に思い出さなくても。
記憶を無くして
しまっているようですね。
私は大丈夫です。
いつか思い出しますよ」
そう言って静かに目を閉じた。
夢境は少し困った。
相手を傷つけてしまった…
こういう時、
どうすればいいのだろうか…

いつまでもヒソヒソ声で
話している二人を待っているのも、
もうそろそろ限界が来た。
イライラした口調で、
「いつまで話してんだよっ
そんなにコソコソと話す内容なのか?」
「ごめんね!
こんな所で止まってないでさっさと
行きましょ!」
(あんたが止めた元だろ…)
と思った夢境であった…。