涼夜は思わず凝視してしまった。
涼夜の目線を感じ取ったのか、
顔をこちらに向けた。
「何かおかしいか」
おかしいも何も白髪なのが驚きなのだ。
一瞬で老人とは思えなくなるほどの、
美貌の持ち主だったが、
白髪の若者なんて今まで見たことが
なかった。
「お前、刀を持っているくせに、
斬れていなかったな。
ちゃんと扱いきれてはいないようだな」
だが確かにあの妖怪に刀は触れていた。
どういう事か気になるがそれよりも、
白髪の若者に興味が沸いた。
「あんたの名はなんてぇんだ?」
恐る恐る聞いてみた。
だが、相手はムッとした顔で
言葉を返してきた。
「人の名を聞く前に、
先に己の名を名乗るのが
道理ではないのか?」
それはもっともである。
「わ、悪かったよ…
俺の名は涼夜。
この国中を旅している。
そして元忍者だ!
だけど今は侍に憧れて、
刀を持って旅してんだ」
こんなに自己紹介をしたのに
相手は(あっそ)と言っているような、
どうでもいいって顔をしている。
こんな顔をしているのに
ちゃんと名乗ってくれた。
律儀なんだとわかった。
「…オレの名は夢境(むきょう)。
お前が不思議がっているのは、
この髪のようだな。
この髪は…
生まれつきなのだと思うが…」
ここで言葉が途切れた。
「どうしたんだ??」
と聞くと、
「記憶が無い」
記憶が無いと聞いて驚いた。
自分のことがわかってないのかと。
まさか…
「幼い頃の記憶が途切れているのだ」
夢境の幼きころに何がおこったのか。
じゃあ記憶がない所から今まで
どうやって生きてきたのかと聞いてみた。
「お前が知るような事ではない!」
怒ってしまった…
そして早歩きで他へ行こうとする。
涼夜はなんとなく夢境のことが
ほっとけなかった。
だから涼夜は夢境についていった。