夢幻~妖~

「ハアッ ハアッ」
息が荒くなってきた。
今までの疲労がどっときた。
足がなかなか進まない。
汗ばみながら近くの木へと体重をかける。
目は虚ろ…助けてもらいたいところだが、
この辺りには人気がなく呼ぼうにも呼べず、
どうせ人が通りかかったって、
さっき戦神が操った刀で
斬り殺されたひとのように
血をべっとりと付いた小袖を見て、
逃げていくに違いない。
そして怪我をした所をみる。
だが、そこには何もない。
実は生まれつき傷の治りが早いのだ。
夢境にはそれが当たり前と思っているため、
特に何も気にしない。




涼夜と緋色に出会うまでは
ずっと一人で生きてきた。
だから今一人になって
何も感じないはずだ。
なのに今、
寂しいと思えるようになったのは、
あの二人のおかげなのかもしれない。
あの二人が、人間らしくない氷った
夢境の心を温めたのだ。


二人の存在が今となっては必要。
と思うと、ますます寂しくなって
「会いたい…会いたいよ…」
涙が溢れる。
止まらない。感情の波が押し寄せる。
こんなにも涼夜と緋色の存在が
夢境には大きくなっていたのだ。


疲労と泣いたせいか、眠気が襲う。
ひとまずは体力回復のためにも、と
体を休めるため仮眠を取ることにした。