「実家で晩ご飯食べてきて、今帰ってきたところだよ」

『何、もう実家が恋しくなったの?』

「違うよ!お母さんに料理教えてもらおうと思って…」

『ああ。茉柚のお母さん、料理上手だもんな』

「でもやっぱり料理は苦手だよ~…私何でこんなに不器用なのかな」

『代わりに俺が器用だからいいんだよ。料理は少しずつ頑張れば慣れるだろ』


聞きたかった優しい言葉と声。

他愛も無い会話は、思わず茉柚の頬を緩ませる。


「あ、それでね、実弥姉が珍しく帰ってきててさ」

『実弥さん?うわ、懐かしいな』

「だよねー!仕事が落ち着いたんだって」

『実弥さん、ばりばりのキャリアウーマンだろ?

社会人の先輩だし、色々聞けた?』

「うん、ばかにされた」

『ははっ!』


いつもは間近で見ていた翔の笑顔も、今は見えない。