北乃たちは、デパートのフレンチレストランで食事をし、玩具売り場へ向かった。

「ママ、僕、トイレに行きたいんだけど。」

「春介!だったら、パパが連れてくよ。」

「あら、お願いね。」


里佳子ひとりが残った。春介は、そこを見計らって、里佳子に近づいた。

「・・・母さん。」

里佳子が振り向く。

「・・・あんたまさか・・。しゅんすけ?」


「・・そうだよ?」


春介は、緊張していた。それに、ホンの少し嬉しいという感情があった。しかし、里佳子は

とんでもないことを言う。


「・・消えて。」

「え?」

「だから、消えてって言ってるの!あのねえ、あたしはもう、あんたなんかの母親じゃない

 んだから。分かる?あのとき、あんたを捨てたのは、あんたが邪魔だったからよ!

 新しい彼ができて、元彼との子のあんたは邪魔だったの。そのとき、あたしは気づいた

 の。あんたは「春介」という名の失敗作。だから、あたしは今の春介を選んだの。

 だからあんたは、春介なんかじゃないわ!お願い、もう私の前に現れないで。

 せっかく幸せになれたのに。邪魔しないでよ!!」


そう言い残し、里佳子は、行ってしまった。トイレから戻った家族たちと。