そして当日。


案の定、加奈と祥太はべったり。


他の人は男女に分かれてるから、ちょっと安心した。


今日は少し遠出して、遊園地に行く。


でもうち…ジェットコースターとか、お化け屋敷とか無理なんだけど。


どうしよう…。


雰囲気を崩しちゃったりしたら…やだなぁ…。


乗ろう、行こう。


やっぱり頑張るしかない。


みんなとしゃべりながら、電車に乗ってるとあっという間に駅に着いた。


「最初何乗るー?」

「ジェットコースターとか?」


何乗るんだろう…。


初っ端から…


「やっぱジェットコースターで始めて、ジェットコースターで終わるでしょ。」


え?二回?


うそっ⁉


心臓持たない…。


「じゃあ早く乗ろう♪」


みんなはてくてくジェットコースターに並んだ。







「楽しかったー‼」

「もうヤバかったね‼」


私にはそんな元気はなく。

まだ足震えてる…。


「次はお化け屋敷行こうよー‼」


また…苦手なの。


しかも加奈と祥太ってことも配慮して、男女になっちゃった。


男バスとか…苦手なのに。


「じゃあ、私雅樹と!」

「一緒に行こー♪」

みんな次々とペアを作る。


「じゃあ景斗は中谷とね♪」

私とペアになったのは、あんまり話したことがない人。


いつもリスって呼ばれてるちっちゃくて、いつもふざけてばっかのイメージがある。


話したことある人と、さっさと組めばよかった…。


次々と入るみんな。


「わぁー怖ー!」

「わっ!」

「ちょっと驚かさないでよ!」


どうしよう…。


「…怖いんでしょ?」


不意に話しかけたのは、景斗だった。


「だっ…大丈夫…っ!」


目をつぶって行けば…なんとかなるかも。


でもちょっと見たら…前に幽霊役らしき人がいた。


「…俺、やっぱ怖いやー。」


え…?


「こんなんじゃなくて、もっと楽しいところ行こ?」


「え…でも…」


さっきまで、男バス同士で盛り上がってたじゃん。


景斗も目を輝かしながら、「俺、この時はちゃんと男見したるっ!」って、女子からモテようとしてたじゃん。


「いいの…?」


「あのさ中谷。

一つだけ言っていい?」


景斗の真顔って見たことないから、思わずドキっとしてしまった。


「中谷…自分で気付いてないだろうけど…



半泣きしてるよ?」



「え…うそ…っ⁉」


慌てると、ポロっと涙が落ちた。


ほんとだ…。



もしかして…?


「行こ。」

「あっうん…。


ねぇ、もしかして…


怖いのって嘘…?」


ピタッと止まった景斗。


「私が怖いの知って…



辞めてくれたの?」


だったら…。


「私、頑張るから!だから…入っていいよ…。



さっきまですごい楽しみにしてたじゃん。」



すると景斗はくるっと振り向いた。



「まさか…聞いてはいたけど、そんな怖いとは思わなかったからさ。」


くしゃっと髪を触る景斗。


「俺、メリーゴーランドでも全力で楽しめるよ?」


「…確かに似合う。」




おもしろいな、景斗。

優しいし…。


背、ちっちゃいけど。



「じゃあ行こっか。」


私たちはメリーゴーランドに向かった。









「あれー?中谷と景斗どこ行ってたのー?」


お化け屋敷から出てきたみんながニヤニヤしながら口々に問う。


「「メリーゴーランド行ってただけだよ!」」


私たちはそう口揃えて言った。


「あれー?お二人さん息ピッタリ♪」

「なんか進展あったのー?」

「なんにもありません!」


そりゃ、ちょっとは優しいなとかは思ったけど。

恋には発展しないし。


「惜しいなー。」

みんなはブーブー言いながら、ぞろぞろ次のところへ向かう。


「ほんとこうゆうの好きだねー、みんな。」


私は景斗に話しかけ、横を向いた。



「…うん、そうだな。」



あれ?


「景斗具合悪いの?」


顔色が悪い?

なんかテンション低い景斗見るの初めて見るから、不自然。


今日、初めてみる景斗の表情が多い日だな。


「…大丈夫♪」


すぐに笑顔を作った。


ぴょんぴょん跳ねながら、みんな場所へ行く。


なんか無理してる…?


でも、心配ばっかしてたらしつこいよね…。