部屋に戻るとテーブルの上には豪華な夕食が並んでいた。

 舟盛り、伊勢海老のグラタン、鮑のステーキ、さざえの壷焼き。

 私の好きな海の幸ばかりだ。

「幸恵、誕生日おめでとう」

 優也が私のグラスにビールを注ぐ。

 今日は私の三十二回目の誕生日。二十七歳を過ぎた頃から時の流れが速度を増した。

 歳を重ねれば精神的な余裕が出てくるだろうと予測していたけど、疲れが増すだけ。

 多発する口内炎。

 足の浮腫み。

 冴えない顔色。

 目の下の隈やくすみ。


 外見は年相応。中身だけが伴っていかない。

 ここまで、ただがむしゃらに生きてきた気だるい身体。くたばるな、と闇雲に鞭を打つ。


 この温泉旅行は優也が私にくれた誕生日プレゼント。


 看護師として日々責任を感じながら働いている私の疲れを癒そうと海が見えるこの宿を予約してくれた。