新幹線で帰るお母さんを東京駅で見送った後、和馬が大粒の真珠のような涙を流した。嘘をついた事が辛かったのだろう。
でも、その嘘はお母さんを安心させるため。
『僕は東京で彼女もできて幸せに暮らしているよ』と。
悪い嘘じゃない。それでも和馬が泣いているから私も一緒に泣いた。マスカラがそれを黒くさせた。黒真珠。
楽しい時、嬉しい時、幸せな時に一緒に笑ってくれる人は沢山いる。
でも本当に必要なのは悲しい時、苦しい時、切ない時に話を聞いて一緒に泣いてくれる人。
和馬が私にリンゴの花の写真を見せてくれた事がある。それは白くて可憐で木に咲いた真珠のようだった。その白い花はやがて赤い実をつける。
『和馬のお母さんへ
和馬を生んでくれてありがとう』


