彼がいつも座る窓際の席からこの場所は完全なる死角。

 もう馴れ合ってしまった彼と私の生活。もっと干渉してほしい。縛っていてほしい。

 私が今、なにを考えていて、私が今、なにが好きで、私が今、なにを必要としているのか気づいてほしい。


「それでいいよ、それで」

 なにがそれでいいのよ。適当な相槌なんて打たないで。

 理解していない理解なんて望んでない。

 最近の彼は化学記号のように冷たい。

 図書館の空気も冷たい。窮屈な身体の一部分を引き締めるかのように冷たい。

 
 彼は図書館の匂いが好き。

 だけど私は新書のインクの匂いが好きなの。


 それ以上に甘ったるくて熱くて不自然なこの男と交わすキスが好き。


「閉館時間まで……して」