「嫌な雨だね。ホテルで雨宿りしよう」
お寿司屋さんを出るとそう誘われた。
勿論、そういう話も出るだろうと思っていたけど、紳士的な人だったからやんわり断れば強引に無理矢理誘ってはこないだろう。
「私、そういうつもりはなくて……」
「はっ、なに言ってるの? あんたさ、子供ができない体だっていうから会ったんだよ」
「えっ……」
私にはその意味がよく理解できていなかった。
「タダで寿司食ってさようなら、ってあんた頭おかしいんじゃないの!! 体無しであんたみたいな女に貢ぐヤツなんていねーよ!! バーカ」
その人は銀座のど真ん中で私を大声で罵倒し、降りしきる雨の霞へと去っていった。
周囲の人の歪な目が私に集中している。橙色の街灯の下に集まってくる夏の虫のように……。


