学校に駆け戻り、トイレで泣いた。


 好きだった男子、というのは小学一年の時から三年間も想い続けてきた初恋の相手。子供の小さな体でも大好きという感情の素質は大人と代わらない。

 子供って無邪気だけど、その分、なにも知らずに残酷な言葉を投げかける。覚えたてのマイナスな言葉をずっと知っていたかのように意味も考えずに投げかける。

 イジメはそういう何気なく投げかけられた一言から始まるんだ、と子供ながらに悟った。

 親切心がある町でも残酷なほど殺風景な街でもイジメはあるし、それはこれからもなくならないだろう。

 授業で習った戦争はイジメの延長線上にあると思った。両方とも人が生きている限りなくならないだろう。

 私は善人ではないけれど、できるだけ手を差し伸べられる人でいたい。誰の命もひとつしかないのだから尊い命に手を差し述べたい。

 あの時、もし不登校になっていたら、今の私は存在していない。

 マラソン大会の翌朝、ビニールに入れた氷で泣き腫らした目を冷やし、いつも通りの二重瞼で平気な顔をして登校した。

 子供ながらに必死で、無理をしてでもみんなに溶け込もうと努力した自分を誇りに思える。