「あと1週間もしたら、会いたくても簡単に会えなくなるんだもんな」


ジワリ……。


あたしは頬に涙がこぼれないように、必死になって耐えた。


「俺、この高校を受験して本当によかったと思ってるよ」


そう言って、陵雅さんは廊下の窓から外を見下ろした。


雪が溶けたアスファルトの水たまりが、太陽の光に眩しく輝いている。


「野球部の連中や友達。それに新堂。かけがえのない仲間に出会えたから」


「………」


「こんなに卒業したくないと思ったのは、今が初めてだよ」


陵雅さんは寂しそうに笑う。


陵雅さんの横顔を見上げると、瞳が少し潤んでいた。


あたしも、この高校を受験してよかったって思ってます。


最初は吹部のレベルが低くてこの高校が大嫌いだったけど、素敵な人達にたくさん出会えたから。


まとまりのあるクラスメイト達。


音楽への気持ちを取り戻してくれた、長谷川さん達。


親友で大好きなミナ。


楽しい時、辛い時、泣きたい時、幸せな時。いつでも隣にいてくれた草太。


そして、高校に入って一目ぼれした、陵雅さん。